助産師の磯原さんから、生まれたばかりの男の子の入浴指導を受ける小舘さん(
岩手県の県立釜石病院で) 岩手県釜石市の県立釜石病院。小舘知美さん(26
)は4日前に生まれたばかりの男の子を腕にほほ笑んだ。里帰りの出産で、一時
、陣痛が遠のいて、無事に生まれるか不安に陥ったが、助産師がつきっきりで励
ましてくれた。
「細かな配慮がありがたかった。家庭的な雰囲気で病院で産んだ感じがしませ
んでした」と話す。出産時、医師は立ち会っていない。
同病院は、人口約4万人の釜石市で出産を扱う唯一の施設。昨秋、異動で常勤
産婦人科医が不在になった。医師と助産師が相談して、正常な経過をたどるお産
は、助産師だけで介助する「院内助産」を始めた。
帝王切開など難しいお産は、別の病院に回すため、扱うお産の数が4割減った
。「時間を気にせず、妊婦さんに寄り添って、女性の産む力を引き出すお産がで
きるようになりました」と助産師の磯原徳子さん。助産師15人が介助したお産
は1年で200件を超え、「満足なお産だった」と経験者から好評だ。
産婦人科医不足で、助産師の活用に注目が集まっている。正常なお産は助産師
が担う同病院の取り組みは、その実践のひとつだ。だが、お産は突然、急変する
ことがある。医師との連携など万一の場合の安全の確保が焦点になる。
同病院から、車で1時間の県立大船渡病院は、産婦人科医4人が勤務し、「地
域周産期母子医療センター」に指定されている。県立釜石病院は、院内助産の実
施に当たり、この病院との間で取り決めを作った。
まず、4人の産婦人科医のうち1人が交代で県立釜石病院に常駐する。正常な
お産は地元で受け持ち、事前に帝王切開などが必要と判断された場合は、センタ
ーでの出産となる。
お産の経過中に帝王切開が必要になった場合、時間に余裕があればセンターに
搬送し、複数の産婦人科医が手術をする。待ったなしなら、地元に交代でいる1
人の産婦人科医が対応。多量出血などの緊急事態には、外科医も応援に入る。赤
ちゃんの異常には、昼夜問わず小児科医が駆けつける。
昨年9月から今年7月までに、分娩(ぶんべん)中にセンターに搬送されたのは
14人。3人は県立釜石病院の医師が緊急帝王切開をした。
2病院に交代で勤務して助産師を支える県立大船渡病院産婦人科(副院長)の
小笠原敏浩さんは「院内助産は助産師だけでできるものではない。医師と助産師
の綿密な連携があって安全が確保される」と話す。両者の連携による新しい形の
お産をリポートする。
(2008年10月22日 読売新聞)
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