助産師外来で妊婦健診を受ける長瀬さん。助産師だけの立ち会いで出産する予定
だ(東京都の葛飾赤十字産院で) 異常がないお産を助産師だけで行う「院内助
産」は妊産婦にも好評と、ある病院が産婦人科医の集まる学会で発表したところ
、会場の産婦人科医から「それは危ない」「何かあったら誰が責任を取るんだ」
という批判的な意見が相次いだ。
大部分は問題なく進行するとは言え、いつ急変して母子に危険が及ぶかわから
ないのがお産だ。万一の時は、訴訟に発展する可能性もあるだけに、助産師だけ
のお産に懸念を示す産婦人科医は多い。
東京都葛飾区の葛飾赤十字産院では4年前、自然なお産を提供するため和室の
分娩(ぶんべん)室を作り、この部屋での正常分娩は助産師だけで介助することに
した。
産婦人科医6人、助産師110人が勤務。高度な医療が必要なお産に対応する
一方、助産師の活用にも定評があった。だが、助産師だけの介助によるお産を始
めると、不安を持つ医師と助産師の間に溝が生じてしまった。
正常分娩の途中に、吸引や緊急帝王切開が必要になった時、協力するのが理解
のある特定の医師だけになり、助産師によるお産は中止の危機に直面した。
医師の側には、「手遅れになってから呼び出されてはかなわない」という不安
もあり、昨年、医師と助産師が話し合って、医師を呼び出す際の基準を改めて明
確にした。
妊婦の血圧の上昇、分娩時間が初産婦で30時間以上に及ぶ、胎児の頻脈、出
産後出血量が多いことが予想される……。
「以前から医師を呼ぶ基準はあったが、今回は現場の医師全員が納得して文書
にした」と副院長の鈴木俊治さん。また、正常分娩が可能な妊婦にも医師の立ち
会いの希望の有無を聞くことにした。
助産師だけのお産を希望した東京都の長瀬順子さん(41)は、上の2人は分
娩台で産んだが、3人目は自然なお産を体験したいと思った。だが、「年齢もあ
り、万一の時に多くの医師がいる安心感は大きい」と話す。
一方、宮城県白石市の公立刈田(かった)綜合病院は、3年前に開設した院内助
産所を今年5月末でいったん休止した。3人の助産師が担当したが、通常業務も
こなしており、予想以上の希望者に「安全上の観点から」(同病院)対応が難し
くなった。
厚生労働省が今年6月に発表した「安心と希望の医療確保ビジョン」では、医
師不足対策として助産師外来や院内助産所の普及を図るとしたが、定着には各医
療機関が乗り越えなければならない課題も多い。
(2008年10月24日 読売新聞)
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